皆、老人福祉をめざす
昨年の秋、T君が「会社を退職して、介護福祉士の専門学校に入学する」と話してくれた。
T君は一流私大・W大の卒業で、天下の大企業J社に入社して27歳。
会社でミスとかトラブルをしたどころか、将来を期待されている人材であった。
月給の額を問いたら、びっくりする程の高額だった。
いろいろ理由を尋ねたら
「会社は利益追求が第一で、どうもそこの所が…、」
という。
老人福祉の職場に生きがいの光明を見たようだ。
それで、今、元気で専門学校に通っている。
やはり昨年の夏、二流私大・A大の大学院在学のOさんがやってきた。
英語とフランス語がベラベラの才女である。
特別養護老人ホームに就職したい、という。
素直で真面目で成績が良いから、トントントンと、ここまで来てしまった。
自分は何をしようか…、悩んでいる頃、老人ホームの就職案内を見た。
その瞬間「これだ」と決心した。
英語もフランス語も関係ない職場だが、全然迷わなかった、という。
それで、今、元気で特別養護老人ホームの事務をしている。
昨年冬、定年退職の60歳のSさんが、何か働きたいという。
「老人福祉だったら、すぐあると思う。ただし、ボランティア的時間給だよ」
と言ったら、えらく喜んでくれた。
それで一回2時間・週に三回、今、元気に老婦人の車椅子を押している。
今年の春、知人からR君のその後の話を開いた。
R君は田舎の高校を卒業後、上京はしたものの遅刻・無断欠勤常習で職場遍歴十回。
田舎へ帰って特別養護老人ホームの寮母(父)になったとたん大活躍。
敬語無視、すぐお婆さんと抱き合う、懸命にニューミュージックを老人に教える…など、変わり者だが、老人の人気者とのこと。
今年の春、中年のKさんがきた。
子育ても終わり、何かしようと思っている。
「老人のお世話をするホームヘルパーって、どうしたらなれるの」
と、聞く。
Kさんは、働く必要のないくらい財産を持っている50歳前後の婦人である。
「スーパーのレジは嫌なの。
もっと他人様のお役に立っている、という実感が欲しいの」
という。
それで、今、元気に社会福祉協議会の介護教室で勉強している。
あの人もこの人も、みんな老人福祉をめざして、元気でやっている。
この人たちこそ、縁の下の力持ち、国の宝……そう思う。
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