社会福祉は国民的な課題だ!
最近、大学、短大、専門学校生はもとより、子育てを終えた家庭の主婦やサラリーマン、OLなどの問で福祉の仕事を志す人たちが目立っている。
ホームヘルパーの受講希望者は毎回3~5倍もの競争率である。
また、文部省が1994年度から高校の家庭科や職業教育の授業の中で「家庭看護・福祉」コースを設けることができるよう、カリキュラムを改訂したのを機に、
そのモデル校の指定を希望したり、家庭科の教諭が率先して福祉を志す生徒に対し、福祉の理論や介護の方法の指導に取り組み始めたりしている高校もある。
今、なぜ福祉の仕事か。
近年の人口の高齢化の進行に伴い、親が年老いて病気がちや寝たきり、痴呆となり、介護の負担が家族に重くのしかかってくるようになってきたほか、
疾病や交通事故、労働災害、薬害などによる機能障害や生活障害、さらには住環境や生活関連施設の不備によって社会復帰もままならない障害者、
あるいは両親の共働きに伴う児童の保育の問題などに関心を寄せる人たちが増えてきているからである。
また、バブル経済の崩壊によって日本経済が低迷し、各企業が雇用調整に乗り出しているため、就職できない新卒者や中途退職者がにわかに福祉の仕事に注目するようになったことも考えられる。
このほか、阪神・淡路大震災をきっかけに、わが国でもようやく国民の間にボランティア活動の重要性が認識されるようになったこともその遠因の一つと思われる。
確かに、わが国は近年、急速な人口の高齢化に伴い、高齢者の介護や看護の問題が年々深刻になっており、寝たきり高齢者は100万人を超え、痴呆性高齢者も約150万人に増えるのではないかと予測されている。
また、疾患による機能障害や生活障害、あるいは交通事故の増加や労働災害、薬害などの影響に伴い、身体障害者は約300万人、知的障害者は約39万人、精神障害者は約200万人とこちらも増加の傾向にある。
さらに生活保護世帯は近年、減少の傾向にあるものの、いまだに約60万世帯、880万人にも及んでいる。
思うに、わが国の社会福祉は長年、貧困な世帯や孤児、虚弱な高齢者などのいわゆる社会的、経済的弱者に対し、家族や地域の住民が中心となって相互扶助が行われてきた。
そして、このような問題も時が経つにつれ、政府や地方自治体の責任のもとで解決されるべきであると提起されるようになり、
明治以降、さまざまな楓や法律が設けられ、行政の施策として位置づけられるようになった。
しかし、今日のようにすべての国民の幸福の追求およびその社会的実現、言い換えれば国民一人ひと。
の自立と社会連帯による社会福祉として本格的に取り組まれるようになったのは戦後、新しい憲法が制定されてからである。
具体的には、この新憲法のもと、すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障され、それまでの「慈恵としての福祉」から「権利としての福祉」へと転換することになったのである。
その後、この憲法の精神にのっとり、社会福祉に関する6つの法律がそれぞれのサービスの対象者ことに制定され、その基盤の整備に努めることになった。
それからかれこれ半世紀経ったわけである。
が、社会福祉施設の数は、全く足りていない。
しかも、戦後の高度経済成長による生活水準の向上や医療技術の進歩による平均寿命の伸長、出生率の低下に伴い、わが国は1970年、スウェーデンやフランスなどに次いで高齢化社会の仲間入りとなった。
この人口の高齢化はその後も進行しており、2020年には国民の4人に1人は65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が訪れることが予測されており、
寝たきりや痴呆性高齢者、障害者、児童、低所得者などの要援護者やその家族に対する社会福祉の整備・拡充がにわかに国民的な課題となってきた。
とりわけ、深刻な問題は特別養護老人ホームなど社会福祉施設の整備・拡充とともに、
これらの施設の寮母(父)などの介護職員やホームヘルパー、さらには保健・医療分野における看護師や保健師などの人材の確保が急務とされている。
そこで、政府は1987年に「社会福祉士及び介護福祉士法」を制定、この社会福祉士と介護福祉士をわが国における社会福祉にかかわる基本的な国家資椙として位置づける、一方、
1989年に高齢者保健福祉推進十ヵ年戦略(コールドプラン)を発表、これらの有資格者を中心としたサービスの充実に努めることとした。
また、1990年には高齢者保健福祉推進十ヵ年戦略(ゴールドプラン)の具体化のために社会福祉ハ法を改正し、サービスの実施主体を政府および都道府県から市(特別区を含む。以下略)町村へと移行する傍ら、すべての市町村に老人保健福祉計画の策定を義務づけた。
1992年には「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の制定、「社会福祉事業法及び社会福祉施設職員退職手当共済法」の一部改正により、
これらの法律を一括して「福祉人材確保法」として位置づけ、都道府県や市町村と連携しながらその養成・確保や資質の向上、雇用条件の改善、職員の研修の強化に乗り出した。
具体的には、厚生省内に保健医療・福祉マンパワー対策本部を設け、看護師やホームヘルパーなど保健・医療・福祉にかかわる専門職を重点的に確保するため、
都道府県福祉人材センターおよびその連結・調整を行う中央福祉人材センターを設置、ナースセンターと公共職業安定所(ハローワーク)を連携させ、求人情報の提供や各種相談、福祉の仕事の説明会などを行うことになった。
さらに1994年度には新ゴールドプランを策定し、翌1995年度から新寝たきり老人ゼロ作戦にも着手するなど、施策の拡充に努めることになった。
一方、身体障害者や知的障害者、精神障害者の問題についても1995年に障害者プラン(ノーマライゼーション七ヵ年戦略)を策定し、
すべての市町村は1996年度までに市町村障害者計画を策定し、2002年度までに必要な事業を実施することになった。
また、児童については1995年、今後の子育て支援のための施策の基本的方向についてエンゼルプランを策定、その一環として当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方を明示し、
1999年度までに低年齢児(0~3歳児)保育や延長保育、子育て支援のための基盤の整備などに取り組むこととなった。
このような流れは今や社会福祉が国民的な課題となってきたからにほかならない。
事実、近年、各地でこれに呼応するように市田村社会福祉協議会(社協)を活動の拠点としたボランティアグループが毎年のように結成されいる。
また、これらの市町村社協をはじめ、消費生活協同組合(生協)、農業協同組合(農協)の中には独自にホームヘルパーなどを養成・確保、在宅サービスに取り組みつつあるほか、一部の民間事業者では高齢者を対象としたシルバーサービスに乗り出すところもあるなど、行政、住民、企業による<地域福祉>として芽生えつつある。
これはだれもが対等・平等で、社会参加が保障されるべく正常な共生社会をめざすノーマライゼーションの理念にもとづくものである。
それだけに、最近、福祉の仕事を志す人たちが増えてきていることはきわめて時流にかなったことである。
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