寝たきり「ゼロ」は実現可能だ
寝たきり老人でない者が、どうして寝たきり老人になってしまうのか?
推埋するに、日本の病人看護は伝統的に「安静が一番」とされてきたことによるのではなかろうか。
急に熱が出た、急に腹が痛い、とりあえず安静。
こうした急性の病気には安静は正しいのだが、それがすべての病人には安静が一番、病人と似ている老人も安静が一番となった。
まさに壮大なる錯覚にはまってしまったのだ。
朝日新聞の夕刊に『ミスターボウ』という四コマ漫画がある。
そこに登場するお爺さんは相当な悪戯者なんだが、いつも座敷の布団で寝ていた。
「元気老人が畳も夜も布団に寝ていたら、本物の寝たきりになってしまう。
寝たきり奨励でおかしいぞ」
と、からかっていたら、平成9年の某日から、お爺さんは布団とさよならした。
錯覚から目覚めたのである。
寝たきりは予防出来る
10年前までは「老人になれば身体機能が低下して、寝たきりになるのは自然の法則」と完璧に信じられていた。
しかし、それは「寝かせきり」に原因があり、現在では寝たきりは適切なケアにより予防できる、と判明した。
筋肉は使わなければ衰える、このことは誰しも体験的に承知している。
筋肉だけでなく心身の様々な機能は適切に使用しなければ機能低下する。
これが、多数の臓器に同時に生じる、
(廃用症候群) → 機能低下(疲れやすい) → ADL(Activities of Daily Living 日常生活活動能力)の低下 → 生活の不活発化 → 一層の廃周症候群、
という悪循環に陥り、最終的に寝たきりとなる。
早期に布団から離れ、自立を目指す介護とリハビリを行うことが寝たきり予防につながる。
こうした認識にたったのは、つい最近のことである。
昭和六十年代に、一握りの先駆者によって
「適切な取組みを行えば、寝たきり老人を激減させることができる」
「適切な介護とリハビリによって、寝たきりは多くの場合避けることができる」
と訴えられ始めた。
また、北欧福祉先進国では、寝たきり老人が驚くほど少ない事実も報告されるようになった。
そして、厚生省(当時)が寝たきり予防対策に力を入れ始めたのが、平成二年(1990)の「ねたきり老人ゼロ作戦」である。
そして、平成三年(1991)に、国民全体に広く普及啓発できるように「寝たきりゼロへの10ヵ条」が策定された。
そんな経過であるから、まだ多くの人は「寝たきりは予防できる」「寝たきりゼロは可能」を「夢物語」と思っている。
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